大判例

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大阪高等裁判所 昭和40年(ツ)94号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕原判決は、……中略……「債権といえども、建物賃借権の如く事実上直接物を支配する関係にある債権は、賃貸人より引渡を受けて占有を維持している限り物権的救済を認めてもよいが、その占有を喪失したときは物権の如き公示方法を欠くが故に、行為者の善意悪意を問わず一律に物権的救済を与えることは取引の安全を害するおそれがあり、この場合には、行為者に賃借権の存在につき認識可能性が存在したときは物権と同様の妨害排除請求権を与えるを相当とするものと解すべきである。これを本件についてみるに、上告人と被上告人及び前記崔永道の夫婦とは二〇年来の知合いで心易く、被上告人が昭和二五年頃本件家屋に入居する以前においては上告人は被上告人夫婦の前記住居と三〇〇米程しか距たつていない京都市左京区一乗寺大原田町に息子高山茂雄とともに住み、同人と右崔永道とは共に韓国人として少年の頃よりの知合で、同人が受刑のため約四年間刑務所に入つていた間に被上告人が本件家屋に入居したことを知つていることが認められるので、上告人は本件家屋の賃借人が被上告人であることを知る十分な可能性を有していたものということができ、被上告人の賃借権に基く本件家屋の明渡請求を拒否することができないものといわなければならない。」旨判示した。

しかしながら、建物賃借権の如き不動産賃借権でも債権であることに変りはないから該賃借権自体に基いて妨害排除の請求をなしうるには、それが対抗要件(公示方法)を具備するか、または法の認める優先的効力を有する場合に限られるものであつて、かかる対抗力、優先的効力を持たない不動産賃借権または単に占有を随伴するに過ぎない不動産賃借権には妨害排除請求権は認められないものというべく、この理は、原判決のいう賃借権の妨害者と目すべき第三者が賃借権の存在につきこれを知り、または少くともこれを認識する可能性を有するというだけでは左右されず、これを特別の場合としてその解釈を異にすることは許されないものと解するのが相当である。このような場合には賃借権自体に基くよりは寧ろ代位行使の方法によつて妨害排除の請求をなすほかはないものといわなければならない。

そうすると、原判決が、被上告人の本件家屋についての賃借権が占有を伴わないものであることを認定しながら、他に前示対抗力等排他的効力を有することを認定しないで、被上告人の右賃借権自体に基く妨害排除の請求として上告人に対し本件家屋の明渡を求めうると判断したのは、法律の解釈適用を誤つたもので、その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決は、その他の上告理由について判断するまでもなく破棄を免れない。(坂速雄 長瀬清澄 谷口照雄)

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